7:24
つぐみの声で目が覚める。
目を開けると、隣で寝ていた妻は上半身を起こしていた。
会社の先輩によると、赤ちゃんの鳴き声に対しては、男性よりも女性の方が反応速度が良いらしい。
妻が母乳を上げているうちに、私はケトルで水を沸かし、60mlの粉ミルクを作る。
母乳には免疫力がつく効果があるとのこと。
母乳、粉ミルクの順で飲ませて、オムツを変えて寝させるというのが、私たち夫婦の手順だ。
一通りの手順を終え、再度布団に横になる。
無論、新生児には3時間おきにミルクを与える必要があるので、今朝も午前1時、4時と起床しては寝るサイクルを踏んでいる。
つぐみが生まれてから昨日までの疲れもあり、妻と私は再び寝た。
10:25
つぐみにミルクを与えて起床する。
3時間おきの睡眠のため、普段の休日のような気持ちよさは無いが、これも親の仕事と言い聞かせる。
11:30
お風呂場で沐浴をさせる。
個人的には育児の中で1番大変な仕事と思っている。
大概は、お湯に気持ちよくなって静かになるが、
暴れだせば、お湯に顔が浸かったり、首が変な方向を向いたりと危険だ。
妻の手を借りながら、無事に終える。
12:15
隣人に挨拶に行く。
すでに上下左隣には済ませていたが、右隣の人には留守で渡せずじまいだった。
インターホンを押すと、たった今起床したエンジニアのような風貌の旦那と、妻が出てきた。
差し障りない程度の挨拶をして、粗品を渡した。
13:33
昼ごはんには、クリームソースを入れるだけで出来るカルボナーラを作って食べた。
つぐみは大人しくしている。
16:30
ミルクを与える。
その後は吐き戻しを防ぐために「ゲップ」をさせる。
20:04
晩御飯を食べる。
出産の体力を戻すため、基本的には私がご飯を作っている。
唐揚げ、じゃがいものチヂミ、鶏肉のミルク煮込み(作り置き)だ。
また、作り置きレシピとして、手羽元の煮込みも大量に作った。
元々料理は好きなので、苦痛ではない。
22:09
つぐみと妻は、次のミルクタイムまでひとまず寝ている。
この時間で、私は「随筆」をしているわけだ。
今晩も、3時間おきの起床だが、夫婦で助け合いながら、育児を乗り越えたい。
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「じゃあ、そういう感じでいこか」
イヤホン越しにマネージャーは頷いた。
今回、第一子が生まれて、育児休暇を取得する。
妻が安定期に入った昨年10月、里帰り出産をするかしないかの話し合いを妻から切り出された。
里帰り出産をするのであれば、今通っている産婦人科から、妻の地元の出産できる病院に転院する必要がある。
マネージャーに相談したところ、翌日には会社の育児休暇制度の資料を印刷して、打ち合わせてくれた。
内容を確認したところ、勤め先の育児休暇制度は「メールアドレスなどの返却」「(どの会社も一緒?かもだが、)保険料の自己納税義務」など、手間がかかるものだった。
結果、育児休暇ではなく有給休暇での休みを取ることにした。
休暇期間は一か月。
赤ちゃんの1ヶ月検診が終わる日まで休みたいと伝えた。
そして月日は流れ、先日第一子が生まれた。
しかし、いざ休みを取ると相談すると、
マネージャーからは「休み中の仕事はどうする?」「(営業なので)数字はどう担保する?」など、私からすると渋い話になった。
そのあと、その日はいったん相談は止め、後日マネージャーと電話で、再度休暇の相談をしたわけだ。
「もしかしたら、取得を許してもらえないかもしれない」と思った私は、
今年4月に改正された「育児介護休業法」の、厚生省のYouTubeビデオを見て、勉強した。
マネージャーとの関係性が壊れる可能性があるので、法律の剣は出したくなかったが、最悪の場合はやむを得ない。
9時15分、マイクロソフトのTeamsで、マネージャーを呼び出した。
マネージャーは事務所フロアから少し離れたのか、イヤホンからの雑音はほとんどなかった。
本題の前の仕事の話を終え、育児休暇の話となった。
前回同様、仕事と数字の話にはなったが、いつからいつまで取るのかという具体的な話となった。
「…オッケー、じゃあ支店長にはそれで話しとくわ」
重装備して臨んだマネージャーとの相談は、すんなりと終わった。
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日本では、男性が育児休暇を取ることは少ない。
私だって「育児休暇」と言いながら、ただの有休消化なので、社会人なら持っている権利を行使しただけに過ぎない。
しかし、数日の育児をして思ったのは、
「思っているより体力がいる」ことだ。
出産明けから、一日中育児をする世の中の母親は大変だ。
ましてや帝王切開などしていれば、まともに動けないだろう。
そこは、パートナーが助けるべきだろう。
(「助ける」という表現も、問題かもしれないが…)
そしてもう一つ、新生児の顔は毎日変わる。
里帰り出産で、1週間に一回会っているだけでは勿体ない。
その赤ちゃんにとっては一回きりの時間だから、一緒にいたほうが、顔を変化を楽しめる。
言わずもがな、「育児休暇を取ってよかった」というマインドだが、
しっかりとやるべきことをやって、時間を過ごしていきたい。