大穴傘立て
4月28日 9:55
本日は有給休暇を取っている。
朝イチで先週行った歯医者の続きの診察を受るため、堺筋線北浜駅に降り立った。
この診療が不要不急といえば、そのとおりである。
歯垢除去と、(念の為の)レントゲンのためなので、急いで受ける必要もない。
しかし、再度日程を調整する面倒臭さと、有給休暇に何か予定を入れたいという私欲が、モラルに勝っていた。
医院に入り、傘立てに傘を入れる。
先客がいるのか、既に傘が一本立てられていた。
不幸にも、黒い取手に透明ビニールの、私が持ってきた傘と瓜二つだ。
さらに傘立て自体も、傘を立てるところが区分けされているタイプではなく、一大穴タイプだった。
傘を取り間違える環境がすべて揃っている中、傘立てに傘を入れるのを躊躇したが、診察の時間が始まってしまう。
既に入ってあった傘は、傘立て奥側に倒されていたので、私は手前側に倒して傘を入れた。
「いや、レントゲンわい!」
10:00
予約時間丁度に診察は始まった。
先週と同じ40代ベテラン女性歯科医師が、歯垢を電動ブラシで除去していく。
彼女は、私の犬歯の根本にある歯垢が気になったのか、執拗にピンポイントで磨いてきた。
痛い、痛いよ…
その後も、「口腔内に徐々に溜まっていく唾を飲み込むのか、それとも我慢するのか」という恒例の駆け引きをして、クリーニングは終わった。
「じゃあ、奥歯のレントゲン取りましょうか」
ついに時は来た。
前回、レントゲンのアプローチをされ、ホイホイと予約をしてしまったが、
虫歯予防は大切なので、定期健診として前向きに受けよう。
レントゲン室に通される。
歯科用のレントゲン機器は、頭の周りをぐるぐると回るような、形をしていた。
頭を固定するために、機器から伸びている棒を、歯で咥える。
「では、頭を動かさないでくださいね~」
扉が閉まると、機器が頭の周りを回転し始める。
そして、稼働音がなんとも近未来的な音だった。
カトゥーンネットワークの番組で、宇宙船の機器が発しそうな音だ。
十数秒、頭の周りをくるくると回った後、扉があき、元の診察室に戻された。
しばらくすると、先ほどの女性医師ではなく、男性の“いかにも地位が高そう”な医師が出てきた。
私の座る席の横にはモニターがあり、2枚のレントゲン写真が写っていた。右下には私の名前が書いてある。
さあ・・・このレントゲンを見て、私の奥歯を診断してくれ・・・!
しかし、その医師はレントゲン写真には一切目を向けず、口を開けるよう指示をしてきた。
「うーん、この奥のやつやけど、小さい虫歯になってるね。削りましょうか。」
こうして、理由もなくレントゲンを撮られ、しかも虫歯を治療することになった。
虫歯の治療は痛みもなく、数分で終わったので凄腕の医師に違いない。
ただ、せっかくレントゲンを撮ったのだから、少しくらいはそれを元に説明をしてほしかった。
少なからず、その医師がブログの前回記事を読んでいたら、説明してくれていただろうに。
私はお礼を言い、診察室を後にした。
受付で診療費を支払う。
今日は4,000円だった。
※ちなみに・・・
診療報酬を見ると、画像診断400点でした。
診療報酬は、1点10円なので、レントゲンは4,000円の負担になります!(実際は3割負担なので、1,200円。)
そもそも、きれいに歯を磨いていれば、こんなことにならなかったはず。
毎日磨いているが、より気を付けて、歯ブラシをしていかなくては。
傘立てに入れた傘を取って、帰ろうとする・・・
傘は1本減っていた。
私が倒した方と反対の傘が残されていた。
そこでようやく気付いた。
初めに傘立てに傘を入れる人が、どちら向きに傘を倒して入れたかを覚えているはずがない、ということに。
私は、だれかの傘を持って、病院を出た。
雨はやんでいた。