12:05
パソコンを閉じ、営業バックに入れる。
3月決算の騒がしい事務所を出た。
昨年末に健康診断を受けたのだが、血液検査で引っかかってしまった。
内容は「中性脂肪」
私のことを知っている人は、
「え?ペイソンズが中性脂肪で再検査??」
「実は隠れ肥満?」
と思ったに違いない。
私は175cm、56kgというガリガリ体型なので、自分としても中性脂肪値で引っかかるのは、寝耳に水だった。
会社の健康室担当の人にも何かの間違いではないかとメールをした。
返信は「中性脂肪値が低過ぎるので再検査です」とのことだった。
圧倒的、納得感…!
ということで、先週梅田の内科で受けた採血結果を確認しに、病院に向かう。
12:30
病院に着いた。
梅田のヒルトンプラザ5階 メディカルセンターフロアの内科(Google mapで梅田、ないかと調べると1番先に出た)を受診したのだが、
フロアがめちゃくちゃオシャレである。
開放的なスペースにベンチやベビースペース、、、
コーヒースタンドまである。
「体調に懸念はあるけど・・・それでも私はオシャレしたい!」って人はここを使って欲しい。
すでに3名程度の患者が待合室に座っている。
12:30が最終受付なので、私が午前中の最後の患者のようだ。
12:45
名前を呼ばれ、診察室に入る。
先週採血をしてくれたドクターだ。
「えっとー、採血結果ね、、、」
何人かの採血結果のリストから、私のものを出してくれた。
ドクターのパソコン画面にも、同じく検査結果が写っている。
「引っかかった中性脂肪値だけど・・・適正よりかは低いけど、少しは上がっているね」
健康診断の際は20程度だった値が42まで増加している。
(適正は45)
まあ、こんなもんだろう・・・
「あとは蛋白が少ないかな、ちゃんとご飯食べてる?まあ、痩せてるもんね・・・」
適当に頷く。
「ちゃんとご飯食べてる?」は、名前の次に多く掛けられる言葉と言っても過言ではない。
ちなみに私は平均以上に食べるのだが、全く身につかない。
燃費が悪いのだ。
そう、それはジムニーのような…
想定内の結果に気を抜いていた矢先、ドクターの言葉に不意をつかれる。
「あとは、この甲状腺の値なんだけど、これが低いね」
TSHという検査項目は、標準0.500~5.000のところ、
私は0.067しかなかった。
前回、採血の前に「中性脂肪が低い人は甲状腺に異常があることが多い」とのことで、そこの項目も計ってもらっていたのだが、
まさにそこに異常値が見つかってしまった。
「低いということは甲状腺低下症の疑いがあるね、、、」
ドクターの言葉をまとめると、
甲状腺亢進症は、甲状腺機能が高すぎる病気で、元気だが手が震えたりするらしい。
逆に甲状腺低下症になると、疲れやすい、元気ない、むくみなどが症状で出てくる。
しかし、低下症になると中性脂肪値が上昇するようで、
「なんでかなー」とドクターは言った。
この呪文のような、そしてただただ不安にさせる言葉を長々と浴びせられ、気持ちが悪くなる。
“くそ・・・早くこの時間が終われ、、、”
数ヶ月後に採血を進められたが、適当にあしらった。
「じゃあ今日はこんな感じかな」
ドクターの言葉に対して食い気味に診察室の椅子を立ち、待合室のベンチに座る。
“くそ・・・名前を呼ばれるまで水を飲んで休憩せねば、、、”
営業カバンの中の水筒を出す。
「ペイソンズさーん」
ノーレスト!
ひと昔前の根性野球部くらいノーレスト!
無理だ、、、気持ちが悪い、、、
“すいません、ちょっと横になってもいいですか、、、?”
ついに私は、採血されたわけでもなく、単なる「診察結果を聞く」ということだけでノックアウトしてしまったのだ。
それは、言葉責めでエクスタシーに達するくらいの超人である。
ドクターが診察室のドアを開けて
「よくこんなふうになるの?」と尋ねてきた。
情けない、、、
私は今後どのような人生を送るのだろう。
採血の時は横になっているが、診察結果を聞く時も横になればいいのだろうか。
仮に第二子以降、妻の出産に立ち会える機会があれば、私も横になって応援すればいいのだろうか。
子どもが病院にかかった際は、私が先に診察台に横になればいいのだろうか。
ハンディキャップが大きすぎる人生である。
12:55
30秒ほど待合室のソファーに横になり、会計を済ませてクリニックを出た。
とりあえず腹が減った。。。
13:05
梅田の家系ラーメン 町田商店でチャーハンセットをかき込む。気持ち悪くなった後の家系ラーメンは味が濃く感じた。
うまい。
考えていても仕方ない。
綱手も、血液恐怖症を乗り越えて五代目火影になったではないか。
場数を踏めば慣れていくなんてこともある。
とりあえず、今の生活を改善して少しでも耐えうる身体にしなくては。
ラーメンとチャーハンを掻き込んで店を出ると、この後のアポイント客に向かって自転車を走らせた。
完